第48回全国高等学校総合文化祭(書道部門)が、7月31日(水)~8月4日 (日)のあいだ、岐阜県下呂市にある「下呂交流会館」にて開催されました。
■和田安以
この度、「第48回全国高等学校総合文化祭 清流の国ぎふ総文2024」に東京都代表として出場しました。
今回出展した作品は、「菜根譚」という中国・明末頃の語録にある「人生福境禍区、皆念想造成。(人生の幸せも禍も全ては心の持ち方次第である)」という言葉の創作です。日頃考え過ぎてしまう性格の私に伝えたくてこの言葉を選びました。
2尺×8尺の紙に、濃墨や羊毛筆を使い、大字では筆を2本合わせて書きました。ー 中国・北魏の時代、死者の為に仏像をつくりその安寧を祈る文を刻んだ造像記 ー 書道部の先輩が書く造像記の迫力に圧倒されたことがきっかけで、先輩の書に憧れ、これまで約一年以上ずっと造像記の作品を書いてきました。今回の作品では、今までの経験から、墨の潤滑や文字同士でのバランス、紙に食い込むような線、全ての線で違った魅力のある掠れが出るよう、一筆一筆丁寧に私の今持っている技術を出し切り、龍門造像記の力強い線質と造形を基礎にして、納得がいくまでこだわりをもって制作しました。
大会は下呂温泉や飛騨川で有名な岐阜県下呂市にある下呂交流会館にて、開会式・交流会・講評会・閉会式が二日間に渡り行われ、アリーナには各都道府県から推薦、選抜された書作品300点が展示されました。漢字・仮名・漢字仮名交じり書の中で臨書・創作とさまざまな種類の作品があり、全ての作品が並んだアリーナに入った時はその壮大さに気分が高揚しました。
交流会では私の他に5人の他県の生徒と同じ班になり、筆で絵しりとりをしたり、岐阜県産「東濃ひのき」を使用した筆筒や「美濃友禅和紙」を使用した栞に文字を書いて、栞を交換しました。また、班の生徒とお互いに作品の解説や感想を言い合う鑑賞交流を行いました。作品を書いた本人から作品へのこだわりや見所を聴き、再度相手の作品を観ると、何も情報がない状態で観た時と比べて、作成背景や、作品への想いが加わり、同い年だからこそ、自分との技術の差が明確になることで、作品から受ける印象が変わり面白かったです。部員以外で書道に向き合ってきた高校生と対面でお話しをするのはとても新鮮な体験で、短い時間でも楽しく交友関係を築いて終わることができました。班員の他にも、普段お会いすることのない他県の先生方から個人的に講評をいただける貴重な機会になりました。
また、地方での方言・食・環境の文化や、地元の方々の優しさに直接触れたことで多くの感動を得る事ができました。中学時代、感染拡大予防により修学旅行が無かった私にとって、他県での生活は有意義な時間でした。
今回の大会では自分の知識・技術の浅さを痛感しました。同じ高校生でも一目瞭然で格の違う作品達の中に私の作品が並んでいることに恥ずかしさを感じました。ですが、恥ずかしいと感じ、私の未熟さを知れたことも、この舞台に立つ事が出来たからこその経験だと今では思えます。確かに劣等感は感じたものの、これまで努力してきたことで私の書く線に自信を持つ事もでき、なにより書道が楽しいと思える様になりました。書道という一つの分野でも、同じ高校生がそれぞれの目標に向かって努力をしていて、目標に対する向き合い方も多様で、正解がないことを体感することができました。
私はこの大会を通して、全国の作品と高校生から刺激を受け、同じ事を続けて逃げるのでは無く、様々な新しいことに挑戦していこうと決意しました。限られた時間の中で、後悔のない選択をし、何事もまずは進んで行動をしていくことで、経験や技術を豊かにしていこうと思います。今回得た学びを活かし、誰かを真似るのではなく、今までに無い書を求めて、これからも私なりに書道を楽しみます。そして、この経験や感じた事、私の技術を後輩に伝えていき、書道部としても精進していきます。
今後の書道部の活動も応援していただけると嬉しいです。