2024年度の1月から2月にかけて、情報科で生成AIを活用した研究授業を実施しました。

文理を問わず全ての生徒が学ぶこととなった「情報Ⅰ」の授業で、生徒らが学びの主役となって、生成AIをツールとして活用しながら問題解決をすることはできないだろうか・・・

そんな情報科の先生方の思いのもと、生成AIを活用した研究授業の実施に至りました。対象は「情報Ⅰ」を履修する文理進学コース1年生のうち、萩原浩平教諭が担当する3クラス。「情報セキュリティ」の単元のうちの3時間で、生成AIを活用した問題解決の方法を検討しました。

 

【1〜2時間目】

「大成高校の魅力は?」「大成高校を象徴するロゴを描いて!」などといった質問をMicrosoft Copilotに投げかけ、生成AIの特性、できること、できないことについて考えました。

「俺より詳しい!」と驚く生徒もいれば、「場所や校名の由来は合ってるけど、知らない学校のカリキュラムが混ざってる!」と間違いを発見する生徒もおり、生成AIが、聞いたことに対して何かしらの返答はしてくれるけど、間違いが含まれることもあるということに気づいた様子でした。

また、生成AIが普段の問題解決での仲間、先生・先輩の役割として活用できることや、安易に利用してしまうと、これまで仲間との対話の中で得られた気づきが”ゼロ”になってしまうことを学びました。

 

 

生成AIの使いどころが分かったところで、話題は情報セキュリティに戻ります。

「大成高校の情報セキュリティを確保するために、私たちにどのような対策がとれるだろうか?」という問いをもとに、いくつか想定された大成高校のネットワーク環境に対してできることをグループで考えました。ここで登場したのが、すごろくに似た「学習進行マップ」です。

 

 

グループでしっかり話し合い、自分たちで考えて考えて、もっと意見を広げたいという時に仲間の生成AIに相談したり、議論に行き詰まって、進めるためのヒントが欲しいという時に先生・先輩の生成AIにアドバイスをもらったりする様子が見られました。

各クラス・各グループで、「生成AIから答えを得て終わり」ではなく、普段よりも対話が増え、提案するアイデアが具体的になっている印象を受けました。

 

 

【3時間目】

情報セキュリティの問題解決について、最終的な結論をまとめます。

実際に使用する環境で想定したおかげで、「生徒の成績にアクセスできる端末を限定すべき」、「暗号化されたサイト以外には飛べないように設定を」などと、具体的な解決策が示されました。

また、これまでの生成AIを活用した問題解決を振り返って、グループごとに「私たちの生成AI利活用ガイドライン」を作成。

生徒は自分たちのこれまでの生成AIの活用を振り返って、「主体はあくまで自分たち」「最後に判断するのは自分たち」など、他教科で使用する場面も考えて、自分たちのこれからの生成AIの「学び」への使い方を提案してくれました。

 

 

【授業を終えて・・・】

生徒からは、「いつもだったら、グループでの対話が止まってしまう場面で、先生・先輩の生成AIにアドバイスをもらうことで、議論を止めることなく進められた」「いつもより対話が深まったと思う」などといった声があがり、学びをより良いものにするためのツールとして、生成AIを活用する様子が見られました。

萩原浩平教諭からは、「今回のような生成AIを活用した問題解決の授業に取り組めたのは、生徒たちが『やってやろう!』と主体性を持って授業に取り組んでくれたからだと思います。やろうと思えば生成AIの出力をそのまま自分の答えにできたので…そういう意味でも、普段の授業から、仲間と学び合うことの良さや問題解決の楽しさに気づいてもらえるような授業を今後も作っていきたいです。」というコメントをもらいました。

授業後には、情報科に限らず授業を参観した教員と、生成AIの可能性について意見を交換する場面もあり、今後の活用について考えるきっかけとなりました。このように、本校では生徒の姿を鏡として、日々授業改善に取り組んでいます。

 

大学入学共通テストの新科目として名を連ねることになり、「情報」は現在、教科としての立ち位置や方向性を再考する時期に差し掛かっています。本校においても、授業の改善だけにとどまらず、「情報進学コース」のさらなる特色化なども視野に入れて、次年度以降に向けた検討を重ねているところです。今後のカリキュラム展開にも、どうぞご期待ください。

 

なお、本研究授業は、東京学芸大学の森本康彦教授からいただいたご指導・ご助言を踏まえて実施されたものです。

森本研究室の大学院生さんにも多大なるご協力をいただきましたこと、感謝申し上げます。